「生涯現役」一本釣り漁師

身体一つで魚と対峙する一本釣り。名手として春夏秋冬、五島列島の様々な魚を一本釣りで漁獲する大櫛さんにお話を聞きました。「若い頃は、網漁を行っている他の船よりも水揚げ高が高かく、誰にも負けないと思っていた」と笑います。技術が発達し、様々な作業を機械で行うことができる今、機械にたよらない大櫛さんの34年の経験と身体で覚えた漁業技術は大変貴重と言えます。 『生涯現役』―――底力が違います。

漁師インタビュー/「生涯現役」一本釣り漁師(大櫛栄さん)

【写真:桜鯛を釣り上げる大櫛栄さん

漁師インタビュー第2回「生涯現役」一本釣り漁師/大櫛栄さん

 

釣り上げられる真鯛

【写真:釣り上げられる真鯛】

 

餌を仕込む大櫛さん

【写真:餌を仕込む大櫛さん】

 

イサキ

【写真:イサキ】

 

息子:川村功考さん

【写真:「生涯現役です」と語る大櫛さん】

漁業をはじめたきっかけやその経緯を教えて下さい。

中学を卒業後、五島を離れ、炭鉱や運送会社に勤めていました。30歳をすぎた頃、実家の都合で五島へ帰島し、漁師だった友人に誘われたのがきっかけで漁業をはじめました。船も道具もなにも持たなかったこともあり、はじめは「裸潜り(素潜り漁)」を行うことにしました。子供の頃から海が好きで潜って遊んでいたので裸潜りにはすぐに慣れました。アワビ採取を始めたところ1日(90分程度の潜り)で40キロ程度の水揚が毎日続き3ヶ月後には、4トンの中型漁船を購入することができました。漁船を購入後、漁師の釣り道具を見よう見まねで手作りし、一本釣り漁業を始めました。

どのような魚を獲りますか?

春はマダイやクエ、シビなどを、夏はイサキ、秋はブリ・ヒラマサの餌であるアジ、冬はそのアジを使ってブリ、ヒラマサを中心釣ります。11月から4月にかけて立縄漁も行います。

それぞれの違いを教えてください。

狙う獲物によって道具はもちろん、釣り方、魚のひき具合もそれぞれです。タイのように身幅の広いものはかかったら、横に倒すまでが勝負です。いったん横に倒れてしまえばあとは簡単です。逆にヒラスははじめからおわりまでひきが強く釣り上げるまで油断ができません。

*一般的に「釣り」と言えば釣竿を利用しますが、プロの漁師は釣竿を使用しません。糸を直接引き上げます。仕掛けなどの道具も自らつくり、糸を引く「手」で釣ります。たよりになるのは漁師としての経験と勘です。

その時期のそれぞれの魚にあった道具を使う。ひき方やコツといったものは身体で覚えています。機械ではわからないことです。実際、ひきがくるとどんな魚がかかったか瞬時にわかります。

中でも「イサキ」を得意とすると聞きますが

一本釣りを初めて4-5年後のことです。当時私は自分の漁場を探していました。よい漁場はすでに他の漁師が漁場としており、板部瀬(小泊漁港から7キロ沖)の砂地周辺しか空いていませんでした。期待はまったくしていなかったのですが、これが大当たりイサキの巣でした。イサキは五島で獲れる夏の旬の魚の中では最高です。また、イサキは巣を見つけることが難しく珍重されていたので良い値がつき、当時イサキだけで1200万円(4ヶ月間)分の揚がりがでました。今もその漁場は変わっていません。

その釣り方は

イサキ漁は朝3時ごろから夜明けまでの漁です。イサキは夜行性で光に集まる習性(「正の方向性」)をもっているので、暗闇の中で灯りをたきます。餌は撒餌ではなく、疑似餌を使います。イサキは群れで生息することから一度に5-6匹かかります。あたりがでだすと時間との勝負にもなるのでひとつひとつ魚を針から外していくのではなく、釣り上げた空中で針から外し、甲板に落とし生簀に入るようにします。その為にイサキ用の針には返しがありません。カツオ漁と同じ要領です。タイの場合は通常の針のため、いったん空中で抱きとめ、針を即座に外します。引いている時点で針がタイの口のどの部分にかかっているかがわかっているので難しいことではありません。

*現在この空中で魚を針から外すことや、タイへの一連の動作を行うことができるのは五島の漁師の中でも大櫛さんただ一人です。まさに貴重な漁業技術です。

一本釣りの醍醐味は?

やはり、魚と対峙している時です。糸が太いものは大きな魚は釣れますが小さな魚は釣ることができません。逆も然りです。その魚にあわせた道具で狙った獲物を釣る。釣り糸が切れるか、切れないか、自分と魚のその瞬間の感触が最高です。船にのれるうちは現役でいたいと思います。釣りという意味では『生涯現役』です(笑)

立縄漁も行うそうですが立縄漁とはどういった漁ですか?

立縄漁はまず、1本の幹となる縄に3本の枝糸をつけ、その先にエサとなる活きたイカをつけます。(このエサとなるイカも自分で釣ります。)その仕掛けに錘をつけ海底まで落とし垂直に縄を張り、目印に浮きをつけます。この仕掛けを20本ほど仕掛け、浮きが動くのをみて仕掛けを引き上げます。昔ながらの伝統的な漁法ですが大物もかかります。今の時期ならマダイやヒラマサ、クエが狙えます。

今年から体験漁をはじめましたが体験希望者にアドバイスやコツを教えて下さい。

たくさんの仕掛けの中のどれにかかるか、どんな魚がかかるか引き上げるまでわからない、といったところが立縄漁の醍醐味だと思います。一本釣りもそうですが、コツは手をやわらかく使うことです。初めての方にも楽しんでいただけるよう、丁寧にお教えします。自分で獲った魚をご自宅で味わっていただくために、漁獲された魚は全てお持ち帰りいただけるようにいたしました。五島の海と立縄漁という伝統的な漁、その新鮮な魚の味を是非お楽しみください。

五島の海と漁船

【写真:五島の海と漁船

「美味しい魚を獲って食べる」単純で当たり前のことではありますが、それは、全身で魚や自然を感じることではないでしょうか。
体験漁を通じて五島の魅力を感じていただけたら幸いです。五島の海を、魚を手で釣り上げる醍醐味を感じてください。

本当の海が味わえます。―― よかとこ、五島。

大浜海業振興会は大櫛さんや他の漁師が持つ貴重な漁業技術を後世に伝えるために新規漁業就業希望者の受け入れ等を積極的に行っております。くわしくは下記お問合せよりお問合せください。

問合せ先:大浜・増田漁業集落(五島ふくえ漁協内) 担当/野口  TEL:(0959)73-5247  FAX:(0959)73-5299

 

掲載日:2007年5月27日

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