「漁業技術の継承」新規漁業就業者

「海が好き」で「船が好き」で57歳からの人生に五島での漁師を選んだ2008年度新規漁業就業者の佃 茂(つくだ しげる)さん。研究・技術職からの転身後、漁業研修が3ヶ月をすぎた今、研修の様子や五島の漁業についての印象、漁師として五島で生活する将来について、指導者である大櫛 栄(おおくし さかえ)さんと共にお話をうかがいました。

漁師インタビュー/「漁業技術の継承」新規漁業就業者(佃茂さん)

【写真:2008年度新規漁業就業者/佃茂さん

漁師インタビュー第3回「漁業技術の継承」新規漁業就業者/佃茂さん

 

2008年度新規漁業就業者 佃茂さん

【写真:2008年度新規漁業就業者 佃茂さん】

 

明日の漁の仕掛けを作る佃さんと深津さん

【写真:明日の漁の仕掛けを作る佃さんと深津さん】

 

 

漁業チャレンジ準備講習会の様子

【写真:漁業チャレンジ準備講習会の様子。中央が佃さん】

 

 

今は様々なことを体験することが必要」と語る指導者の大櫛さん

【写真:「今は様々なことを体験することが必要」と語る指導者の大櫛さん】

前職についてお聞かせください。

佃さん前職は、化学系の会社で研究・技術職に従事していました。住んでいるところが、神奈川県茅ヶ崎という海のある街だったため、週末は海をみて過ごしていました。海を見ながらいずれは海に関係するような仕事ができたらいいなと漠然とした気持ちの中で船の免許を取得するなど準備をしていました。いずれはとは思いながら、日常的な生活や家族があったので定年までは前職の会社を勤め上げようと思っていたところ、子供の独立など周りの環境が整ったので早期退職をし、海の仕事を具体的に目指しました。

漁師生活に五島を選んだきっかけ・理由

佃さんインターネットで「漁業就業支援フェア」を知り、東京で行われた説明会に参加しました。ですがやはり、ほとんどの地域の募集に年齢制限があり、57歳という高齢者の就業がむずかしい状況でした。五島のブースに立ち寄って話を聞いたところ、年齢制限があったにもかかわらず、「一度、五島へ来てみませんか。」と漁業体験をすすめられたことがきっかけで五島を訪れることとなりました。

-五島の印象

佃さん将来的には一本釣りをやりたいという漠然とした思いがありました。五島を訪れ漁業体験に参加した際、指導候補者に一本釣りの名手であり、伝統漁法の技術をもつ大櫛さんを紹介されました。漁業体験中は大櫛さん宅に宿泊させていただきました。大櫛さんや関係者を含め五島には排他的なところがなく、自分が五島/大浜に対し違和感がなかったというのが第一印象です。すんなり入っていけ、ここでならばすくなくとも研修を受けた後、新規漁業就業者としてやっていけるという意識が確認できました。それが五島を選んだきっかけです。

(*現在は2007年度新規漁業就業者の深津利光さんと共同生活を営んできる佃さん。ともに明日の漁の仕掛けを作ります)

佃さんの指導、受け入れについて

大櫛さん佃さんが体験漁業のため初めて来島した頃はイサキのシーズンでした。最初は「本気でやるのか?」と半信半疑でした。実際、漁業体験では自分の作業をやめて、つきっきりでイサキ釣りの基礎的な技術を教えてみましたが、やはり初めてなので技術的には未熟でした。ですが、技術は教えていけばいいことです。やってできないことではありません。教えていけば彼はやれると感じました。佃さんが一度茅ヶ崎に帰り、再度五島へきたときは「これは、本気だな。」と感じたので、自分も本腰を入れてやろう、自分の技術を全て教えようと思いました。現在のブリ・ヒラス等の一本釣り漁も、自分の漁よりも佃さんの指導を中心に行っています。

漁業体験について

*五島市水産課と五島ふくえ漁協は、「漁業チャレンジ準備講習会」を実施し、6月28日・29日の2日間に渡り体験者の受入をおこないました。
五島での新規漁業就労希望者への漁業内容の理解、体験実施を目的としたこの講習会では、具体的な漁業概要を学ぶ「座学講習会」及び実際の漁を体験する「漁業体験講習会」を実施しました。

佃さん海と船は好きだったのですが、釣りをやったことはありませんでした。初めての釣り体験を五島の漁業体験でやらせてもらいました。初めて漁に出て、魚を釣ったときのあの手ごたえと喜びは忘れません。とはいえ、イサキがかかっても針のはずし方ひとつ知らず、大櫛さんに針のはずし方から教わりました。自分の年齢がいくつであっても初心者にはかわりありません。ですが、自分のやる気さえあればできないことはないと思っています。
また、漁業体験初日に船に酔ってしまいました。「これが、船酔いか。」と、初めての船の体験でした。最初の洗礼をうけました。ですが、船酔いはこの時以来、一度もありません。

大櫛さんダメかもしれないな、と妻に言ったこともあります(笑)ですが、最近になってできるかもしれないと思います。自分も高齢なので指導はこれが最後になるだろうと思っています。佃さんは技術的にはまだまだ未熟なところが多く失敗も多いが、それも経験です。漁師は釣りあげるだけではなく、その魚が「売れる状態」でなければなりません。そこが重要なところですが、佃さんは今は様々なことを体験することが必要だと思います。

 

漁業研修スタートから3ヶ月、失敗談・成功談

佃さん大櫛さんは船の操縦や釣りに関しても、現場主義的な指導が多く、早い段階で好きなようにやらせてくれるので細かい失敗は数多くあります。大櫛さんのやり方を見ていて、頭ではわかっていてもいざやってみるとできずに失敗します。逆に失敗することでそこが身について今後、成功談へ結びついていくものと思います。私への指導に関し、今現在は、これから始まるブリ漁の指導をしてくださっていますが、実際、本格的にブリ漁が始まったらブリの数を確保するために自分の指導をしている余裕はないだろうと思います。その時は足手まといにならないよう今、技術や魚を釣り上げる手足の感覚などを体得、取得しようと努力しています。

漁業技術指導を行ってみて

大櫛さん自分の技術を半年もしくは1年で全てを教えきれるのだろうか?という不安はないわけではありません。本当の漁師になるための一通りの技術を習得するにはやはり少なくとも2年はかかると思います。既定(研修期間)の1年では難しいと思いますが、本人のやる気次第です。飲み込みは早いほうだと思うのでできるのではないだろうか、と思います。

ブリ漁の後、どういった漁・技術を指導する予定ですか?

大櫛さんブリ漁は年内いっぱいくらいまでの漁です。1月から4月くらいまではトローリング(引き縄漁)でヨコワを、5月くらいからはイサキ漁を指導する予定です。合間をみてアオリイカも短期的ではありますが指導するでしょう。

五島の漁業についての印象 漁師として五島で生活する将来

佃さん漁師で、かつ五島でやっていこうという決心はついています。研修を始めて3ヶ月、今まで漁にでていやだと思ったことは一度もありません。自分に天性のものがある、とは思いませんが、自分の残りの人生をかけてもいいものだと思っています。以前から不安はありませんでしたが、漁師としての研修や生活をするにあたって五島でやっていこうという気持ちがどんどん強くなりました。昨日できなかったこと、わからなかったことが、今日できるようになる、わかるようになる。満足感と充実感を感じながら生きている実感があります。好きなことを好きなところでやっていく、そこでの出会いが五島とあった、と思います。コンビニやスーパーといった便利さはないけれども、溶け込んでいける町だと思います。そういった生活環境があるから自分も含め以前から振興政策(漁業者受け入れ)が成功しているのではないかと思います。大櫛さんから自分が受け継いだ技術を後々はまた新たな人へ指導し引き継ぐ、というかたちで五島へ恩返しができればと考えています。

新規漁業就業者の佃さんと指導者の大櫛さん

【写真:大浜漁協前にて。新規漁業就業者の佃さんと指導者の大櫛さん

五島でも数少ない機械に頼らない漁業技術をもつ大櫛さんから佃さんへの指導・漁業技術の継承は今後大きな意味を持つことになるでしょう。研修が終了する半年後にまたお話をうかがいたいと思います。

本当の海が味わえます。―― よかとこ、五島。

掲載日:2008年11月28日

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